大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)537号 判決

(1) 控訴人は、被控訴人らのした本件丸材の引渡義務の承認あるいは引渡は、無権利者たるふじ工業発行の荷渡指図書に基づくものであるから、控訴人発行の荷渡指図書の撤回が妨げられるいわれはない旨主張するが、さきに説示したとおり、被控訴人らは、ふじ工業発行の荷渡指図書に、控訴人発行の荷渡指図書を加え、これら二通に依拠して、補助参加人らに対し本件各丸材の保管並びにその引渡を約したものであり、かつ、右説示は、被控訴人らの、仮に控訴人が本件丸材の輸入者並びに所有権者であるとすれば、ふじ工業発行の荷渡指図書に、さらに控訴人発行の荷渡指図書をも加え、これらに基づき右約定に及んだ旨の予備的主張に対して判断を加えたものであることはいうまでもないから、この点に関する控訴人の主張は、的を外れたものというほかはない。

(2) 次に、控訴人は、被控訴人らの右承認は、単なる口頭によるものにすぎないから、右撤回を妨げるべき特段の事情があるものとすることはできない旨主張するが、ある物件の受寄者において、荷渡指図書の呈示を受け、該物件の荷渡先に対しその保管並びに引渡を約するについては、必ずしも右指図書に副署し、あるいは寄託者台帳の寄託者名義を変更する手続をとるなど何らかの客観的に認識できる外形的な措置をとるべきことが義務づけられているわけではなく、口頭をもってその引渡を約することで事足りるものと解せられるが、本件においては、さきに認定したとおり、荷渡指図書が呈示されたことのほか、さらに、被控訴人山九の場合にあっては、補助参加人従業員が丸材の保管場所に赴き、検量明細書と現品とを照合検査した上、丸材の周囲にロープを張りめぐらし、ベニヤ板に補助参加人の所有にかかる旨を記して掲示し、被控訴人北九州、同佐伯の場合にあっては、ふじ工業に対する売渡の事実の確認、補助参加人に対する預り証の交付、検量明細書と現品との照合検査等の措置がとられているのであるから、一定の外形的な行為をも伴っているものといえるから、いずれにしても、この点に関する控訴人の主張は、これをとり上げる余地のないものである。<中略>

(4) 控訴人は、さらに、補助参加人外四名は、本件各丸材をふじ工業が控訴人から買受けるに先立ってこれを買受けたものであるから、民法第五四五条第一項但書にいう第三者に該当しない旨主張するが、そもそも他人の物の売買がなされた場合において、売主がその後において所有者から目的物を買受けるにいたったときには、その時をもって目的物の所有権は買主に移転することとなり、売主がまず所有者から目的物を買受け、しかるのちにこれを買主に売渡した場合とその法理ないし法律効果において格別の相違はないのであるから、のちに、売主ともとの所有者との間の売買契約が解除されたとしても、買主は民法第五四五条一項但書の第三者として、一定の要件の下にその所有権取得をもってもとの所有者に対抗することができるものと解するのを相当とすべきところ、さきに説示したとおり、補助参加人らは、控訴人のした解除に先立ち、すでに本件各荷渡指図書に基づき、被控訴人らからそれぞれ本件各丸材引渡の確約を得たものであって、右確約により、本件各丸材に対する支配は、被控訴人ら保管のまま補助参加人らの許に移行したものであるから、右法条の趣旨に則り、その対抗要件を具備した場合に準じて、すでに取得した本件各丸材の所有権を否定されることはないものというべきである。

(杉田 中村 松岡)

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